カイロプラクターとして必要なリスク管理は多岐渡ります。
例えば、以下のような事項が挙げられます。
- 適応症の確認
- 禁忌の理解
- 患者とのコミュニケーション
- 倫理的な配慮
本記事では「禁忌の理解」について書きたいと思う。
カイロプラクティックにおける禁忌の定義
カイロプラクティックにおける禁忌の定義は、「安全かつ効果的な施術を行うことが適切でない、または顕著なリスクを伴うために避けるべき医学的または生理学的な条件や状況」を指します。禁忌に該当する場合、施術が患者に害を及ぼす可能性があるため、施術を行うべきではありません。
カイロプラクティック治療の代表的な禁忌としては、悪性腫瘍(癌)や大動脈瘤、感染症、骨折などがあります。
腹部大動脈瘤では腰痛が主訴となるケースが散見されます。このような腰痛を関連痛や放散痛などと言います。関連痛とは原因構造のある場所と痛みなどの症状が自覚されている場所が異なる痛みのことです。
従って、腹部大動脈瘤のケースでは、いくら腰痛の治療を行ったとしても、症状の改善は見込めません(一時的に楽になる可能性はあります)。当然ながら、腰痛の根本原因である腹部大動脈瘤を改善しない限り、腰痛は軽減されないのです。
禁忌症状に対する2つの問題
しかし、ここで重大な問題が2つあります。
- カイロプラクティックの治療により腹部大動脈瘤を悪化させてしまう可能性があること
- カイロプラクティックの治療(腰痛)を継続することで、本来その患者さんが受けるべき治療が受けられない(または遅延する)こと
特に1番は致命的になる可能性もあり、このような事態は絶対に避けなければなりません。万が一、カイロプラクティック治療の刺激により腹部大動脈瘤を破裂させてしまった場合、その患者さんは、その場で気を失い、恐らく命を落とすことになります。
カイロプラクターにとってのリスク管理
それでは、このような悲劇を避けるためには、カイロプラクターはどのような準備(リスク管理)が必要だと思いますか。
それは、カイロプラクティックの禁忌以外の症状にも、精通しておくことです。具体的には内科的、外科的疾患に対する知識を身に着け、問診や触診を通して禁忌に気づける能力を養うことです。
従って、米国のカイロプラクティック大学では、内科学や整形外科学、小児科学、老人学などカイロプラクティックの適応以外の学科までカリキュラムに組み込まれています。
そういう意味でカイロプラクターはファミリードクターとしての役割も担っています。
カイロプラクティックの適応症状は、命に係わるものはありません。しかし、禁忌症状の中には本来受けるべき治療を早急に受診しなければ、後遺症が残ってしまったり、場合によっては命に係わる場合もあるのです。
カイロプラクターとして、そのような重大な疾患を抱えた患者さんが来られた場合、速やかに専門家の受診を勧めることができるように準備しておきましょう。