本日、名古屋での実技講習がありました。テーマは頭頸部の末梢神経。
小後頭神経や鎖骨上神経など頭頸部の症状の原因となる神経絞扼症候群について、理論と実践を交えて勉強していきました。
途中、1人の生徒の方から大変良い質問を受けました。
関節枝の絞扼により関節包が拘縮するメカニズムについての質問です。
その場では端折った回答になってしまったので、以下に詳細をまとめておきます。
関節枝の絞扼とは?
まず、関節枝の絞扼とは、神経が何らかの原因で圧迫され、その機能が阻害される状態を指します。関節枝は、関節包に感覚や運動の情報を伝達する重要な神経です。この神経が絞扼されると、以下のようなことが起こりえます。
- 感覚異常: 関節包からの感覚が鈍くなり、関節の位置や動きに対する感覚が不明確になります。
- 運動機能低下: 関節包を動かす筋肉への指令がうまく伝わらなくなり、関節の動きが制限されます。
- 栄養障害: 神経が絞扼されると、神経を介して運ばれる栄養が不足し、関節包の組織が変性する可能性があります。
関節包の拘縮への影響
関節枝の絞扼が関節包の拘縮を引き起こすメカニズムは、主に以下の3つの要素が複合的に作用すると考えられています。
- 炎症反応の増強: 神経の絞扼は、炎症反応を引き起こし、関節包に炎症細胞が集まり、炎症物質が放出されます。この炎症反応が慢性化すると、関節包の組織が硬くなり、拘縮が生じやすくなります。
- 膠原線維の過剰産生: 炎症反応に伴い、膠原線維が過剰に産生されます。膠原線維は、関節包の強度を保つために重要な成分ですが、過剰になると関節包が硬くなり、可動性が制限されます。
- 神経支配の乱れ: 関節枝の絞扼は、関節包の神経支配を乱し、筋肉の緊張が亢進したり、弛緩したりすることがあります。筋肉の緊張が持続すると、関節包が引っ張られ、拘縮が生じやすくなります。
具体的な例
関節枝の絞扼が起こる具体的な例としては、以下のものが挙げられます。
- 反復動作: スポーツ選手など、関節を繰り返し使う人では、神経が繰り返し圧迫され、絞扼が起こることがあります。
- 傷害: 関節の骨折や脱臼など、外傷によって神経が損傷し、絞扼が起こることがあります。
- 腫瘍: 関節周囲に腫瘍が生じ、神経を圧迫することがあります。
- 変形性関節症: 関節の変性によって、神経が圧迫されることがあります。
まとめ
滑膜性関節の関節包の支配神経である関節枝が絞扼されると、関節包の拘縮が起こるメカニズムは、非常に複雑です。炎症反応の増強、膠原線維の過剰産生、神経支配の乱れなど、複数の要因が絡み合って、関節包の機能が低下し、拘縮が生じます。