カイロプラクターが治療を始める前に必ずやらなければならないことは、患者の症状の原因を特定することである。
正確には、治療前に原因を完全に特定することは不可能である。なぜなら、それは治療後の患者の状態(予後)によってはっきりするからである。
従って、治療前の段階ではある程度目途をつけることができれば十分だ。
一つの症状に対して、複数の原因が考えられることが多い。これを鑑別診断と言う。
例えば、腰痛の代表的な鑑別診断は以下の通りになる。
- 腰椎椎間関節症
- 椎間板ヘルニア
- 腰方形筋の過緊張
- 梨状筋症候群
- 上殿皮神経障害
- 仙腸関節障害
実際は問診や触診などの検査によって、これらの鑑別診断から取捨選択を行い、原因構造を絞っていく。
ただ、必ずしも1つに決める必要はない。むしろ、複数の原因がある場合の方が多いだろう。なぜなら、関節や筋肉、神経は互いに影響を及ぼし合っているからである。
原因構造を特定したら、次にやるべきことはそれらの原因構造の優先順位をつけることだ。つまり、患者の症状への影響が大きい順番を決める作業である。
これは、カイロプラクターの裁量によって決められる。つまり、知識と経験をベースに、最終的には「何となくそんな気がする」というカンを頼りに判断することになる。
この段階でカイロプラクターの頭の中では、患者の症状の発症メカニズムが出来上がっている。しかし、あくまでも仮説である。
そして、仮説を検証する作業が治療なのだ。
仮説に基づいて治療を行い、結果とすり合わせる。仮説通りであるならば、患者の症状は寛解するはずだ。そうでなければ、もう一度仮説を練り直す必要がある。
カイロプラクターは、この作業を全ての患者に対して反復することが重要である。
反復の積み重ねによってのみ、カイロプラクターとしての経験値が積み上がっていく。
仮説を立てることなしに「何となく」で治療を行ったら、おそらく何十年それを続けてもカイロプラクターとしての経験値は積み上がっていかないだろう。
そして、いつまで経っても「当てずっぽう」のままだ。
一方、仮説と検証を繰り返してきたカイロプラクターの「カン」は、経験に基づく「カン」であり、決して当てずっぽうのカンではない。
優れたカイロプラクターになるためには、必須の作業である。
本校ではそのための知識と技術の修得を目指している。