米国の医療系大学では、一年目の授業に医療英語(Medical terminology)というクラスが必ずある。
医学用語の授業である。アメリカ人も知らない専門用語を学ぶのだが、そういう意味では英語のネイティブスピーカーでない外国人と横一線と言えなくもない。
本学でも「医療英語」の授業は必須となっている。
今後、AIが発達して英語を読めなくても、困らない世界が来るかもしれない。
しかし、そのような世界が来るのを待つ受け身的なスタンスではなく、今すぐ自らの力で英語を読みこなすことができるようになる能動的なスタンスが重要だと考える。
目標は本学卒業までに「英語論文をすらすらと読めること」である。
医学の専門用語というと難しそうに聞こえるが、実はそうでもない。
なぜなら、語源さえ知っていれば、その意味を推測できるからだ。ちなみに、医学用語の語源はラテン語やギリシャ語である。
また医学用語には合成語が多い。複数の単語をつなげて一つの言葉にしているのである。
例えば、Spondylolisthesisという言葉がある。これはSpondyloとlisthesisという2つの単語の合成語だ。
従って、これら2つの言葉の語源を知っていれば、Spondylolisthesisの意味は推測できるのだ。
ちなみに、Spondyloとは「脊椎」のこと。そして、listhesisは「滑り」のことである。
つまり、Spondylolisthesisは「脊椎の滑り」ということだが、これを日本語にすると脊椎すべり症となる。
ほぼ、全ての医学用語はこのような感じで作られているのだ。
それでは、以下の単語はどうだろうか。
”Pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis”
なんとこれで一語である。日本語では「塵肺症」。
この単語を語源に切って分解してみると、以下のようになる。
pneumono 「肺の」 (ギリシャ語)
ultra 「超」 (ラテン語)
micro 「微細」 (ギリシャ語)
scop 「視野」 (ギリシャ語)
ic 「…の」 (ギリシャ語)
silico 「ケイ素の」 (ラテン語)
volcano 「火山灰の」 (ラテン語)
coni 「塵」 (ギリシャ語)
osis 「症状」 (ギリシャ語)
塵肺症がどんなものなのか、全く知らない。
しかし、これらの語源から、「火山灰に含まれているケイ素の微細な塵を肺に吸い込むことで生じる症状」のことであると推測できる(正しいかどうかは保証しない)。
このように知らない単語でも語源さえ知っていれば、何となく推測できてしまうところが面白い。